エジプト綿「GIZAコットン(ギザコットン)」について種類や繊度、歴史など徹底解説!

私たちの生活する中で一番身近な繊維といえばコットンですが、コットンにも色々な種類があります。今日はコットンの中でも世界三大綿の一種、「GIZA(ギザ)コットン」について解説していきます。

この記事を読んだらGIZA(ギザ)コットンが語れるようになりますよ!

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ギザコットンの生産地と種類とは

コットンは世界中で生産されていますが、地域ごとにそれぞれの名前が付けられていて特徴が異なります。ギザコットンはエジプトのギザ地区で生まれたエジプト綿の一種です。

ギザコットンの生産地

ギザコットンはエジプト北部のナイル川河口の三角州(デルタ)から南下した地域で栽培されています。デルタは他の地に比べ土壌が肥沃で湿度もありコットンの栽培には最適な土地です。

引用:theworld-j.com

ギザコットンの種類とは

引用:Giza Cotton LLC

ギザコットンは今までに多くの種類が開発され、開発された順にGIZA1、GIZA2と名付けられています。現在ではGIZA96まで開発されています。

エジプト綿花輸出業者協会ALCOTEXAが年ごとのコットン輸出マップを作成しています。そのマップによると2020-2021で輸出されている種類は下記の8種類のみです。

  • GIZA45
  • GIZA87
  • GIZA92
  • GIZA93
  • GIZA96
  • GIZA86
  • GIZA94
  • GIZA95

ちなみに2019/2020のマップでは上記の種類に加えてGIZA90も輸出されていました。このマップを見ると年によって同じ土地でも異なる種類のコットンを栽培している事が分かります。

2020/2021 MAP

引用:ALCOTEXA

2019/2020 MAP

引用:ALCOTEXA

ギザコットンの繊維について

ギザコットンの繊維長と繊度は?

ギザコットンは繊維長によって超長綿と長綿に分けられます。

繊維長:35mm以上→超長綿(Extra Long Staple)
繊維長:28mm~34mm→長綿(Long Staple)

それぞれの繊維長と繊度を下の表にまとめました。しかし!超長綿に分類されている種類の中に35mm以下のものが混ざっています!!エジプト綿花協会が分類しているので間違えないと思いますが何故でしょう!

<超長綿 EXTRA LONG STAPLE>

種類繊維長繊度
GIZA4536mm2.95μ
GIZA8736mm3.2μ
GIZA9233mm3.8μ
GIZA9337mm2.9μ
GIZA9634.4mm3.6μ

<長綿 LONG STAPLE>

種類繊維長繊度
GIZA8631.8mm3.9μ
GIZA9432.8mm3.5μ
GIZA9528.4mm3.8μ

それにしてもコットンの繊度の細さに驚きます。動物繊維だとカシミヤの細い毛でも10μです。たまにカシミヤでもチクチクするという方がいますが、このような肌の敏感な方にはコットンをオススメするといいですね。

ギザコットンの繊維の形状は?

ギザコットンの繊維の形状ではありませんが、コットンの顕微鏡画像です。繊維自体は平べったい形をしていてねじれています。ヨコ断面画像を見ると繊維中央に空洞が空いています。空洞に水分や温かい空気を含むことが出来るため吸湿性、保温性に優れます。なので夏の素材と思われがちなコットンですが、保温性があるため夏に身に纏うと暑く感じることも。

顕微鏡画像

引用:FLEX JAPAN

ヨコ断面画像

引用:FLEX JAPAN

ギザコットンの歴史

photo by Historical Railway Images

ギザコットンの起源は1819年に遡ります。当時オスマン帝国の属州エジプトの支配者であったムハンマドアリパシャにフランスの繊維技術者ムッシュージュメル(1817年からエジプトの紡績・織物工場のプロジェクト指導者として雇われていた)が、カイロにあるトルコの将校マホベイの持つ庭で発見されたエチオピア綿の品種の綿を栽培するよう持ちかけます。この綿を栽培すれば国の農業生産全体に革命を起こすだろうと熱く説得をしました。

ムハンマドアリパシャ

引用:wikipedia

一方トルコの将校マホベイは「この綿は儲かる」と思い始め、庭から綿を採取するとムハンマドアリに2000ドルを要求し売りつけました。ムハンマドアリもこの綿に将来性を感じマホベイの要求に応じることにしました。

ムッシュージュメルは地元の商人たちと組み小さな土地でこの綿の栽培を始めました。1820年に採れた綿はたった3つの俵分で、その綿はイタリアに輸出されました。

1822年には1500トンの綿が生産されましたが品質は良いものの安定はしませんでした。1823年、生産量が10000トンにもなり、品質も安定してきましたが繊度が太く前年の品質より劣っていました。この結果から品質を保つためには新しい種子や栽培方法の改善が必要と考えられました。

1827年にムハンマドアリは海島綿を輸入しました。ナイル川のDamietta支部でこの綿を栽培したところ完璧な品質の綿が育ち、それからというものギザコットンはこの地を中心とし肥沃な土と適度な湿度を保つデルタとナイル川沿いで栽培されるようになりました。世界で最高品質の綿花を育てるのに最適な場所ということは、その後2世紀の間収穫されたコットンの品質が証明しています。

梱包の技術も上がりヨーロッパへ持ち込まれましたが、この細い繊維の綿を扱えたのはイギリスの綿織物を得意とし最新機械を備えているランカシャーの工場のみでした。後にヨーロッパでは「ジュメル」「マホ」と呼ばれ知られるようになりました。

ランカシャーの工場

引用:Lancashire Villages

エジプト綿の商標マーク

引用:ALCOTEXA

このマークはコットンエジプトアソシエイションに承認を得てライセンスを得た企業のみが使え、世界でも最高品質ということはもちろん、下記の3点を保証しています。ギザコットン用のトレードマークがあるのかはリサーチ中です。発見したら追記します。

  1. エジプトで作られていること
  2. 手作業で収穫されていること
  3. 手作業で行うことで化学的薬品を使用していない

ギザコットンの収穫について

photo by Ahmed Dream

栽培・収穫時期

収穫頻度: 1回 / 年間

4月:植え付け(気候が穏やか)
7~8月:綿繊維が形成(気候が安定しているこの時期に形成された繊維は規則的で均一になります)
9月:収穫

下の画像がコットンの成長過程です。綿花は種類によって色が異なります。ギザコットンは3つの中で左側のイエローの花をつけます。

引用:Scientific Research

収穫方法

ギザコットンの収穫は一つずつ手作業で摘み取られます。4~5回に分けて良質なコットンボールだけを収穫します。通常機械で収穫されるので機械の強さに耐えられるよう化学薬品を使いますが、ギザコットンは手作業で行われるため化学薬品を使わず収穫ができます。

まとめ

トルコの将校マホベイさんがすごい悪人のようになってしまいましたが本当は良い人かもしれません。

コロナの影響かもしれませんが2019-2020年より2020-2021年の輸出の品種が減っているのが気になります。手作業で収穫されるとても品質の良いエジプト綿、この手法を受け継ぎながら衰退しないで欲しいです。

ギザコットンの生産量ですが確実な数字が見つけられていないので記載を控えました。今後見つけた際には追記していきます。他にも情報が入ったら追記していく予定です。

おわり

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