獣毛繊維の中でも一番人間との関わりが深いウール。掘れば掘るほど奥深い繊維です。
今日はウールの特徴(メリット・デメリット)と繊維について書いていきます!
ウールの3つの特徴
特徴① 撥水性に優れている
特徴② 吸湿性に優れている
特徴③ 保温性に優れている
特徴① 撥水性に優れている
ウールの繊維は人の髪の毛と同じで表面がうろこ状の表皮(スケール)で覆われていて、そのスケールが水を弾く性質を持っています。
特徴② 吸湿性に優れている
ウールの表皮(スケール)は撥水性に優れますが、水滴より小さい水蒸気はスケールを通り抜けて内部に入ることが出来ます。スケールの内部にはコルテックスという細胞が詰まっていて、そのコルテックスが水を吸うため吸水性にも優れるということです。
触ると湿っている感じがなくても内側は水分を含んでいる可能性もありますので、長期間着ない場合は密封せず風通しの良い場所に保管することをオススメします。
特徴③ 保温性に優れている
繊維内部のコルテックスがバネのようにねじれているため弾力の良い繊維です。ねじれていることで繊維内が密になりすぎず空気をよく含むため保温性に優れます。
ウールの3つのメリット
メリット① シワになりにくく型崩れしにくい
前にも説明したように、繊維の内側がバネのような構造になっているため繊維に弾力があるのでシワになりにくく型崩れもしにくいです。シワになってもスチームアイロンですぐに伸びます。制服で使用される理由はシワになりにくいというのもあるようです。
メリット② 汚れがつきにくい
撥水性が良いお陰で汚れも弾いてくれます。例えばコーヒーとかこぼしても吸収したらシミになってしまいますが、弾いてくれれば拭くだけで汚れが落とせます。
メリット③ 冬でも夏でも快適
繊維内に空気を多く含むため冬は暖かく、夏は吸湿性と発散性を活かし汗を吸って発散するのでサラッとします。冬向けの素材と思われがちですが通年気持ちよく使用できます。キャンプなどのアウトドアにも向いているかもしれません。
ウールの2つのデメリット
デメリット① 虫がつきやすい
繊維が美味しいのか虫がつきやすいです。数ヶ月着ない場合はしっかり洗濯をして汚れを落としてから、防虫剤と一緒にしまうようにしましょう!
ちなみにつく虫の種類は「カツオブシムシ」と「イガ」の仲間で卵を産んでしまうと厄介なので防虫剤はお忘れなく。
デメリット② 洗濯で縮んだら元に戻らない!
ウールは繊維が縮れているため繊維と繊維が絡みやすいです。その性質を利用して羊毛フェルトになるのですが、セーターなども洗濯機で普通に洗ってしまうと編み目が絡みフェルトセーターになってしまいます。一回フェルト化してしまうと元に戻らないので注意が必要です!洗濯の際は中性洗剤を使用し、手洗いまたは洗濯機のドライモードで洗うことをオススメします。
ウールの繊維について
ウールの繊度(繊維の太さ)
15μm〜40μm(1μm=0.001mm)
*種類により異なります。
繊度とは繊維の太さのことで、細ければ細いほど柔らかく滑らかな風合いになります。なので細い繊維=高価ということが多いです。繊度は動物ごとに差がありますが、ウールだけでも種類によって15〜40μmと結構差があります。
細く柔らかい毛は肌に触れる洋服やストールなどで使われ、太く硬い毛はカーペットなどインテリア寄りの製品に使われています。
ちなみに日本人の髪の毛の太さは70μm〜90μmです。もし髪の毛が繊維界に参入したら地位が低そうですね。
ウールの繊維の長さ(繊維長)
5cm〜30cm
*種類により異なります。
代表的な羊の種類とその詳細
同じ種類と思えないほど体型や顔、毛量が違っておもしろい!
●メリノ/Merino
原産国:スペイン
繊維長:6.5〜10cm
繊度:18.0〜25.0μm
毛量:オス)7.5kg メス) 4.0kg
特徴:オーストラリアメリノが有名。ニュージーランドメリノやフランスメリノもある。メリノについての詳細は後日アップします。
●コリデール/Corriedale
原産国:ニュージーランド
繊維長:10〜15cm
繊度:28〜32μm
毛量:オス)7.0~10.0kg メス) 5.0~7.0kg
特徴:メリノ種と長毛種のリンカーンを交配して生まれた。体が強く、気候風土に適応するので飼いやすい。日本で飼育されている羊の大半はコリデール。
●サフォーク/Suffork
原産国:イングランド サフォーク州
繊維長:8〜11cm
繊度:27〜32μm
毛量:2.5kg〜4kg
特徴:イングランドのサフォーク原産が名前由来。比較的細く良質の毛を持ちニット糸やフェルト、布団などに使われている。
●ブラックフェース/Black face
原産国:イギリス
繊維長:20〜30cm
繊度:35μm
毛量:2kg〜3kg
特徴:イギリスの山岳地帯に生息し、毛は長くて剛毛。カーペットなどの敷物やツイード服地に適している。
●チェビオット/Cheviot
原産国:イギリス
繊維長:10〜12cm
繊度:28〜32μm
毛量:2kg〜4.5kg
特徴:イギリス純血種の一種。クリンプが多いので繊維に弾力があり膨らみのあるカーペット用の糸を作ることができる。
●ロムニー/Romney
原産国:イギリス ケント州
繊維長:17.5〜22.5cm
繊度:32〜36μm
毛量:4kg〜6kg
特徴:イギリスケント州のロムニー原産が名前の由来。日本のカーペットに使用されている羊毛の70〜80%がロムニー。
繊維の形状
人間の髪の毛と同じくうろこ状の「スケール」という表皮で覆われていて、内部はコルテックスという細胞が詰まっています。
主成分
ケラチンというタンパク質の一種。ケラチンは硫黄原子を含む成分を含むため、燃やすと特有の刺激臭がする。衣替えで久しぶりにウールのセーターを引っ張り出したときに、硫黄のような独特の臭いがするのはこのせいかと納得。
メリノウール の繊度によるランク分け
ウールも種類によって繊度が異なり、メリノウールだけでも繊度が5ランクに分けられています。ユニクロのセーターで世間に知れ渡ったエクストラファインメリノも繊度ランクの1つです。ちなみにカシミヤは約14μmなのでスーパーエクストラファインメリノはカシミヤに近いということがわかります。
ランク名 | 繊度 |
---|---|
スーパーエクストラファインメリノ | 16.5-17.5μm |
エクストラファインメリノ | 18.5-19.5μm |
ファインメリノ | 18-19μm |
ミディアムメリノ | 20-22μm |
ストロングメリノ | 23-25μm |
毛の刈り取りについて
毛の刈り取りは年に1回、春頃に行われます。
羊は毛が生え変わらないように品種改良されているので、毛を刈らない限り伸び続けます。そのため暑くなる前の4月〜5月頃に毛を刈ります。
原種の羊は刺毛(外側に生えている硬くて真っ直ぐな毛)で覆われていましたが、産毛(内側に生えているフワフワと柔らかい毛)の方が繊維として用途が多いため産毛だけ生えてくるように長い年月をかけて品種改良されました。
ショルダーウール と呼ばれる肩の毛が一番上質。繊度がよく揃っていて細い。地面に接することがほとんどないため汚れや植物性の雑物が少ない。お腹やお尻回りは地面に接することが多いため汚くて毛質も悪いので刈り取るとすぐに取り分けておく。