悲しい家畜の現実。羊のミュールシングについて

世界的に問題になっているミュールシング。どのような飼育法なのか、どんな問題があるかについて書いていきます。

ユニクロのHPには「ミュールング」と書いてありますが、瀧定名古屋RWSの証明書には「ミュールング」と書いてありどちらが正しいのか分かりませんが、どちらでも通じればいいのかと思いました。

ミュールシングとは?

羊のお尻は深いシワが多く、糞尿などにたかるハエがそのシワの中に卵を産みウジがわいてしまいます。ウジが体に寄生してしまうと痛みが強く苦しみながら死んでいく羊も少なくありません。その予防策として1929年〜お尻の肉を切り取りシワのない皮膚を生成することで寄生を防ぐという何とも痛ましい飼育法が始まりました。この飼育法を「ミュールシング」といいます。

ミュールシングは生後6ヶ月未満の子羊が対象で、手足を棒に縛り付け吊るした状態で行われます。麻酔もしなければ傷口の手当もせず抗生剤も与えないことから長年動物愛護団体が禁止するよう訴えています。

ミュールシングが必要とされる種類

ミュールシングを必要とする羊の種類は「メリノ種」です。メリノ種は羊毛用に品種改良を繰り返して生まれた種類で、毛が多く採取できるよう皮膚面積を増やすためにシワの多い品種に改良されました。他の種類よりもシワが多く、毛量も多いので皮膚が不衛生な状態になりやすいのです。

ノンミュールシングで飼育されているニュージーランドの羊たちは年に2回毛を刈ることで皮膚を健やかな状態を保てる環境づくりをしています。しかし年に2回毛を刈ると質の良い長い毛が育たないのでオーストラリアのメリノウールより質が落ちてしまいます。
お尻の毛だけ年2回刈ることはできないのかな〜。。

ミュールシングを行っている国

現在もオーストラリアではミュールシングが継続して行われていますが、ニュージーランドでは2007年に廃止、2018年から法律で禁止されるようになりました。イギリスでは早くから廃止されています。

ニュージーランドでは法的に禁止されましたが、当国で飼育されている羊の大半はロムニーという種類でメリノ種はそこまで多くありません。メリノ種大国のオーストラリアが廃止しない限り多くのメリノ種の羊は可哀想な飼育法で育てられることになります。

<廃止している国>
ニュージーランド(2018年10月〜)
イギリス

ミュールシングの羊毛を使用しない企業

オーストラリアは2010年までに廃止すると約束していたにも関わらずこれを撤回したことで、2008年スウェーデンに本社を置くh&mはオーストラリアの羊毛は使用しないと発表しました。その動きから日本の企業もノンミュールシング羊毛への意識が芽生え、無印良品も2012年〜段階的に取り入れ始めています。

ノンミュールシング羊毛を使用している企業

海外
H&M(2008年〜)
アバクロンビー&フィッチ
GAP
ジョンストンズ オブ エルガン
UGG®
日本
無印良品(段階的に2012年〜)
瀧定名古屋
ユニクロ(段階的に)

ノンミュールシングを疑問視する声も

中にはミュールシングを必要と考えている人もいるようです。確かに麻酔なしで切り取るのはとても可哀想ですが、ウジが寄生してしまうと死に至るほど痛く苦しい思いをすることになります。麻酔をしてミュールシングを施してあげた方が羊にとって良いのではと意見もあり、確かにな〜と思ってしまいました。

ミュールシングを廃止したところで、不衛生な飼育環境で多くの命を失っては意味がありません。また企業がノンミュールシングの羊毛にシフトしてしまった時、痛い思いをしてミュールシングをした羊たちの羊毛に買い手がつかず処分されてしまわないかと心配になります。

ミュールシングが善悪ということの前に羊がストレスなく生きやすい方法を考えないと、この反対運動も人間の自己満足に終わってしまいます。

さいごに

多くの毛が採れれば儲かるとお金に目が眩んだ人間たちが品種改良を繰り返し、都合の悪いパーツがあれば切り取ってしまうという身勝手さに驚きを隠せません。今後羊が健やかに生きれる環境を、今までの罪滅ぼしとして作り上げていけたらと思いました。



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