中国で生産される新疆綿(しんきょうめん)に「強制労働」や「人権侵害」という問題が浮上しユニクロもその渦中に。どんな問題がありユニクロがどのように関わっているのでしょうか。
なぜユニクロのシャツが輸入差し止めされたのか?
事の発端は中国新疆ウイグル自治区の新疆綿畑で「ウイグル族を強制労働させている」と問題になったことが理由です。
※新疆綿は中国の新疆ウイグル自治区で採れる綿の一種です。
この問題を重く受け止めた米国は中国への制裁として2020年9月よりウイグル自治区の一部の事業体から米国への輸入を停止。バイデン政権発足後はより取締まりが厳しくなり、ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入は全面禁止となりました。
ユニクロの綿シャツはウイグル自治区で生産された疑いがあり輸入を差し止めされましたが、ユニクロは「原材料は中国由来のものではない」と反論。しかし十分な証拠がなく却下され差し止めされたままになっています。
米国がこの問題に過剰反応するワケとは?
なぜ米国がウイグル族に過剰反応し中国を非難するのか。数年前から中国はイスラム教徒であるウイグル族に「再教育」として強制収容し、「過激思考の浄化」や独立志向があるウイグル族を「中国化」させるため洗脳していると報じられています。収容人数はおおよそ150万人と推測されウイグル族の10人に1人と高い割合です。
中国側は再教育は認めていますが強制収容はないと主張しています。しかし亡命者のインタビューから監禁や虐待、不妊手術などが日常的に行われていることが明らかになり、米国や英国、その他数カ国が中国を非難しています。
本当に強制労働はあるのか?
綿花畑での強制労働が問題視されたのはドイツの学者エイドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz)がレポートを発表したことから始まりました。しかしゼンツは現地での調査や亡命者からのインタビューを行うことなく他者が書いた記事を元にレポートをまとめ上げたため確実な証拠はないとされています。
ゼンツが参考にした記事は強制労働という内容ではなく、ウイグル族の住む地域は工場地帯から遠く離れているため仕事が少なく貧困層の世帯が多いことが問題になっていました。中国政府は2020年までに農村の貧困人口をゼロにするという政策を掲げていたため、高収入を得られる綿収穫の出稼ぎを推奨していました。希望した人々のみ県政府の良い待遇のもと綿花畑へ出稼ぎに向かいました。出稼ぎ=強制労働と言っているのであれば中国が米国に対し「中国いじめ」というのも納得してしまいます。
近年では収穫の機械化が進み、綿花畑周辺の住民たちで十分な作業量になったため出稼ぎに来る人は減少しています。機械化の割合は北疆(ウイグル自治区の北部)で機械97%、手摘み3%。ウイグル族が住む南疆では機械60%、手摘み40%で収穫されています。
貧困層を減らそうとしている中国が安い賃金で強制労働させるとは考え難く、機械の導入により手作業の割合も減少しているためこの強制労働説は信憑性が低いように感じます。
新疆綿の使用を中止した11ブランド
ウイグル族への人権侵害を問題視したブランドは新疆綿の使用中止を発表しています。日本でも2021年5月の時点で3社が中止を発表しました。
- H&M(スウェーデン)
- NIKE(アメリカ)
- adidas(ドイツ)
- CONVERSE(アメリカ)
- BURVERRY(イギリス)
- Calvin Klein(アメリカ)
- UNDER ARMOUR(アメリカ)
- TOMMY HILFIGER(アメリカ)
- new balance(アメリカ)
- GAP(アメリカ)
- ZARA(スペイン)
- ミズノ(日本)
- ワールド(日本)
使用を中止したブランドへの不買運動
中国を中傷したとし上記のブランドに対し中国国内で不買運動が起きています。中国企業が運営するアリババやJD.comといったオンラインショップから削除され、SNS上でボイコット宣言する人が出てきています。
今後ユニクロも使用を中止した場合、不買運動が起こる可能性があります。しかし中国でのユニクロの年間売上は全体の30%超を占めており、もし不買運動が起きてしまうとかなりの痛手を追うことになります。
無印良品は生産工程や従業員のプロフィールを把握し、監査も行っていることから強制労働はなく問題はないと主張しています。しかし世界展開をしている無印良品も近いうちに決断を迫られることになるでしょう。
さいごに
新疆綿の問題については曖昧さを感じてしまいますが、ウイグル族の強制収容は亡命者のインタビューから信憑性の高い証拠が出ています。新疆綿の使用中止が強制収容に影響を与えることが出来るのであれば、少しでも多くの企業が中止するべきだと思います。しかし中国での売上が大きい企業にとって使用中止は苦渋の選択です。今後のユニクロや無印良品の決断が気になります。